日本の大学や高校をめざす中国人学生が増えているという。背景にあるのは中国内の「巻」や「内巻」……。いわば日本は、中国の受験戦争のしわ寄せを受けているような形だ。
近年来,越来越多的中国学生选择到日本读大学或高中。这一现象背后与中国国内的“卷”或者“内卷”密不可分。也就是说,日本承受了中国应试教育带来的影响。
「巻」とは、学生同士の過酷な競争を意味する言葉。特に「内巻」には、不毛な競争というネガティブなイメージもついてまわる。
“卷”指的是学生之间的过度竞争。尤其是“内卷”一词,更有毫无意义的竞争这一负面含义。
「巻」を生み出している一因は、中国の「中考分流」にある。2018年にはじまったこの教育制度では、高級中学への進学を目指す中考に失敗すると、大学進学の道が閉ざされる。その場合は、中等専門学校、職業中学などへ進学することになる。中考の合否が決まった時点で、約半数が大学進学を諦めなければならない過酷なものだ。大学を卒業しても就職が難しい現状が生んだ制度ともいわれる。
“卷”出现的主要原因是中国“中考分流”制度的出现。这一制度2018年启动,许多学生中考失败未能考上普通高中,未来也无法考大学。这时他们只能选择读中专或者职业学校。也就是说,中考成绩出来的那一刻,就会有将近半数的学生不得不放弃读大学,这是一项非常无情的制度。也是在大学毕业生就业难这一现状下催生出来的一项制度。
2024年度に“新巻王”の異名がついたエリアがある。新たな開発区に多くの企業を誘致し、人口が増えている上海市の松江区だ。受験生の増加に伴い、合格ラインの点数は昨年比で2.3点もアップした。中考は一般的に750点満点で、試験内容は地域ごとに異なるものの、“新巻王”では600点台をとっても厳しい状態だったという。このように学生は、学力とは直接関係のない要因でも競争に晒され、進学が危うくなったりもするわけだ。
中国有个地区被视为2024年“新卷王”地区——凭全新的开发区吸引众多企业入驻,导致人口不断增加的上海市松江区。由于应届考生不断增多,合格线比去年增高了2.3个点。一般来说,中考成绩满分750分,考试内容各省份地区有所不同,而松江区这一“新卷王”地区的合格线居然达到了600分的高台,竞争非常激烈。因此,即使是与学习成绩没有直接关系的因素,也会让这里的学生卷入竞争当中,升学的几率也可能会大大降低。
この「中考分流」が生んだ「巻」が、日本留学へ向かわせているという分析も多い。「国内の大学が無理なら海外へ。海外のなかでも安くて近い日本へ」というわけだ。日本学生支援機構の「外国人留学生在籍状況調査」のデータを見ると、令和5年度の日本への中国人留学生は約11万5,000人にのぼり、前年度比で11%増加している。
很多分析认为,中国“中考分流”制度催生出的“内卷”,是让很多中国学生选择赴日留学的一大原因。而“国内大学无望的话就出国留学。留学就去学费较便宜,距离较近的日本”。一日本学生支援机构“外国留学生在籍状况调查”数据显示,令和五年度(2023年)赴日留学的中国留学生数量达到11.5万人,较去年增长了11%。
高田馬場で見かけた団体客の正体
高田马场团体游客的真实目的
今年の3月、それを実感する光景を目撃した。場所は東京の高田馬場駅。旗をふる添乗員の後ろに家族連れの4、50人の団体がつづいていた。観光客とは雰囲気が違う。子供は皆、小学生の年齢だった……。
今年3月笔者看到了让人真切感受到中国学生赴日留学现状的一幕。在东京高田马场站,挥舞着旗子的导游身后跟着四五十人的团体游客,他们都带着孩子,但这群游客的氛围却有些不同。仔细一看,这些孩子都是小学生的样子......。
思わず尋ねると、日本の高校や大学、予備校を下見するツアーだという。たしかに高田馬場には中国人向けの予備校が集まっている。参加者のひとりはこう話してくれた。
询问过后,得知他们都是为了考察日本的高中、大学和预备学校来到日本的。的确,高田马场开设了许多面向中国人的预备校。一位团内的游客这样说道:
「日本留学を決めているわけではありません。ただ最近の中国の厳しさを考えると、事前に見ておいたほうがいいと思い。それに日本は安いので家族旅行も兼ねてね」
“现在还没确定要让孩子到日本留学。但最近国内教育形势太严峻了,所以就觉得提前了解一下比较好。而且日本各类费用比较便宜,也可以当做一次家庭旅行。”
留学経験者に聞くと…
询问了留学生后......
東京都内の美大をめざしているCさん(20)は、そんな留学志向のひとりだ。現在、大学入試を受けるための日本語学校に通っている。
C(20岁)也是有留学意愿的学生,目标是考东京都内一所美术大学。目前他正在为了考大学读日语学校。
「中国の美大は高考の点数の要求も高く、倍率もものすごい。欧米への留学も考えましたが、学費年間約6万ドル(約853万円)もする。日本は私立の美大で200万円ぐらいで、安いんです。それに欧米は、在学中にスキルや人脈を培っても、卒業後に居続けるビザを取るのが難しいと聞きました」
“中国美术大学对高考分数的要求很高,录取几率也很低。我也想过到欧美国家留学,但一年的学费就要6万美元(约853万日元)。而日本私立美术大学学费也只要200万日元左右,很便宜。而且听说到欧美留学,就算在上学期间有很高的能力和人脉,毕业后也很难拿到长期签证”。
日本で予備校に通い、今年の4月に日本の大学へ進学したYさん(20)は、ずっと日本に憧れていたという。もっとも、「巻」などの背景はあまり関係ないといい、日本のアニメが好きだったことが留学の決め手になった。中国の地方都市に住む両親は「国内の大学に通えば」と大反対したそうで、「親の説得がいちばん大変だった」という。
另一位读过预备校后,在今年4月进入日本某大学学习的Y(20岁)一直都很憧憬日本。他留学的原因原本和“内卷”之类的背景没有很大的关系,单纯是因为喜欢日本动画才决定赴日留学的。住在中国某县城的父母一开始极度反对,认为“考国内大学更好”,他也表示“说服父母是最不容易的”。
「日本のアニメはほとんど高校生が主人公ですよね。『スラムダンク』も、『名探偵コナン』も。それに憧れました。そういう人は多いと思う。日本は、“日本の高校生活の楽しさ”を宣伝するのがうまいと思う」
“日本动画中的主角大多都是高中生。比如《灌篮高手》《名侦探柯南》之类的。我一直都很憧憬。我觉得很多人都有这样的想法。日本真的很会宣传‘日本高中生活的乐趣所在’。”
ただ、卒業後も日本に住み続けるかはわからないという。
不过,他尚未确定毕业后是否要继续在日本定居。
「来るまでは、日本に対してポジティブな憧れしかありませんでした。ですが、実際に暮らすには空気を読む力、慎ましさ、日本人同士の独特な距離感を理解する必要がある。難しいかなと感じています。でも、今は大学で専攻した分野を勉強するのがとにかく楽しい。今しか得られないことなので、来てよかったと思っています」
“来日本之前,我对日本满满的都是正向的憧憬。但实际来到日本生活后,我发现我必须要努力理解日本人察言观色的能力,小心谨慎的做事风格,和日本人之间独特的距离感。我觉得这也很不容易。不过,我觉得我的大学生活非常充实有趣。这是我当下才能获得的快乐,所以还是觉得幸好选择来日本留学了”。
Zさん(23)も、日本に高校留学をしたが、卒業後はアメリカの大学に進学することを選んだ。スタイリストを目指しているという。
Z(23岁)也是到日本读了高中,毕业后选择到美国读大学。他的目标是成为一名造型设计师。
「みんな同じようなスーツで面接に行く就職活動の様子を見て、この分野を日本で学ぶのは難しいと思った。夏休みに久々に日本に遊びに行ったのですが、街行く人たちの服装を見て、日本は生きづらそうだなと改めて思いました」
“看到大家穿着一模一样的西装找工作的样子,就觉得我不能在日本学习这类专业。暑假的时候我久违的来日本玩了,看到街上行人的穿着,我再次感叹在日本生存真的很不容易”。
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