DEARS 花言葉物語 青の季節
楚々とした悲しげな乙女が竜胆ならば、次にお話する花は皇華絢爛なマダムと言ったところでしょうか。では、十月の誕生花、ダリアについてのお話です。その花の魅力はなんといっても多様な種類。メキシコの庭園で、スペイン人の医師が始めて見たダリアこそ、原種に近い一番咲きだったことでしょう。その後、八重咲き、半八重咲き、ポンポン咲きから、花弁の先が細かく咲くフリルド咲きなど、多様な姿を楽しむことができるようになりました。形もさることながら、色も豊富で、ダリアの庭園は宛ら舞踏会の華やかさであることでしょう。では、ここではダリアについてのお話を一つ、その花に見せられてしまった、二人の貴婦人の物語でございます。
その昔、フランスの皇后様にこの花をこよなく愛した方がおられました。庭園はダリアで溢れ、その何百という花が咲き起こる季節には、園遊会を開いておいてでした。「なんと美しい。」園遊会に招かれた客人は言葉を失いました。「(ようくぞ?)これだけの見事な花を咲かせましたなあ。」引かざった貴族たちは口々に皇后様を褒め称えました。「大好きな花ですから、一生懸命心を込めて育てておりますもの。」誇らしげに答えておいでの皇后様に、お一人のご婦人が気軽な気持ちでお強請りをなさいました。「あの一期は美しい立派なダイアを、分けていただけないかしら。」ところが、皇后様はぴしゃりと断られました。それどころが、そのご婦人が盗みにくるかもしれないと、庭園に見張りを立て、自ら一切の世話を行うことにしたのです。それらは、すべて花が愛するが故の行動でした。しかし、皇后の身分にあるかぎり、花の世話ばかりをしているわけにもまいりません。厳選の末、一人の庭師に任せることになりました。その花を諦めきれていなかったご婦人はそれを聞いて、友人のポーランド貴族に頼み、庭師にその球根を手に入れたのです。