むかしむかし、諌早(いさはや)に、中村大蔵(なかむらたいぞう)という、腕の良い刀鍛冶がいました。
很久很久以前,在諌早市有个叫中村大藏的人,他是个技术高超的刀匠。
ある時、大蔵は神社へ納める神剣を作ろうと思いたちました。
有一次,大藏想做把神剑送给神社。
そしてそれから百日の間、大蔵は水をかぶって身を清めると、朝から晩まで一心に刀剣を打ち続けたのです。
从那之后的一百天里,大藏泡在水里,洗净身体,一天到晚一心炼剑。
そんなある日の事、大蔵の前に一人の女が現れました。
突然有一天,大藏面前出现个女子。
「お願いがござります。どうか私に、鋭いモリを一本作って下さい」
「我想拜托您一件事。请无论如何,给我做一把锋利的鱼叉吧」
「いや、今は打ち込んでいる仕事がありますので」
「不,我现在有一心要做的工作」
「お願いします。どうしても必要なのです」
「拜托您了。无论如何都是必要的啊」
女があまりにも熱心に頼むので、大蔵はついに引き受ける事にしました。「わかりました。では、三日後に来て下さい」
由于女子的诚心请求,大藏居然答应了。「明白了,那你三天后来吧」
それから三日後の夜、女は大蔵の作った見事なモリを見るととても喜んで、「ありがとうございます。これはほんのお礼のしるしです」と、何と銀ののべ棒を差し出したのです。
之后三天后的晚上,女子看到大藏做的精致的鱼叉非常高兴。于是就拿出银条来给刀匠。
大蔵は驚いて、押し返そうとしましたが、「いいえ、どうかお受け取り下さい。あなたさまの立派なモリは、この銀でも足りぬほどです」
大藏非常吃惊,想要把银条还给她,但是她却说「不,请一定要收下。你做的这么好的鱼叉,就算是这银子也不够」
「そうですか、それならありがたく頂きます。しかし、あなたは一体どなたですか?そしてなぜ、このモリが必要なのですか?もちろん他言は致しませぬゆえ、どうかお聞かせ下され」
「这样啊,那我就收下了。但是,你到底是谁啊?而且,为什么需要这鱼叉呢?当然,我不会告诉别人的,所以请告诉我吧」
大蔵が言うと、女はそっとあたりをうかがい、声をひそめてこんな事を言いました。「実はわたしは、お城の近くの山下淵の主なのです。ところが近頃大なまずがやって来て、私の子どもたちを次々と食い殺してしまいました。この上は、憎い大なまずを殺して子供たちの仇を討ちたいと、あなたにお願いに来たのです」
听到大藏这么说,女子悄悄地看了一下周围,然后压低声音说道「其实,我是城附近的山下深渊里的主人。但是最近来了只大鲇鱼,把我的孩子们一个个都杀害了。我要杀了那可恨的鲇鱼替我的孩儿们报仇,所以才来找你的。」
「何と・・・」大蔵が驚いていると、女は続けて、「仇を討ったあかつきには、今後淵では、人の命を取らぬ様に致します」と、それだけ言って、姿を消してしまいました。
「怎么会・・・」大藏大吃一惊,女子继续说道「等我报完仇,今后在深渊再也不会取人命了」说完这些后,她就消失了。
さて、その翌日。山下淵に、見た事もない様な大なまずの死がいが浮かびました。
到了第二天,在山下深渊里,有一条巨大的鲇鱼的尸体浮了出来。
その話しは、殿さまの耳にも届きました。
这件事传到了老爷的耳朵里。
その頃、山下淵では魚を取る事を固く禁じられていました。
那时候,在山下深渊捕鱼是禁忌。
家来が調べて見ると、なまずの心臓に一本の鋭いモリが突き刺さっています。
让随从调查了一下后,发现鲇鱼的心脏被一把尖锐的鱼叉所刺透。
見るとそのモリには、はっきりと『中村大蔵』という銘(めい)が刻まれているのです。
仔细一看,发现上面清晰地刻着『中村大蔵』的锻造者名。
「中村大蔵を、ひったてい!」ただちに大蔵は縄をかけられて、お城の庭に引き出されました。
「把中村大藏给我带过来!」立刻把大藏五花大绑带到了城院里。
「なまずを殺したのは、自分でありません」大蔵は、言いましたが、「では、誰が殺したというのだ?」「それは・・・」主との約束を破る事は出来ないので、仕方なく黙っていました。
「鲇鱼不是我杀的」虽然大藏这么说,但是在被问到「那么,是谁杀的呢?」时,「那是・・・」因为不能毁约,所以只好沉默。
「黙っておる所を見ると、やはりお前の仕業だな!魚を取ってはならぬとの禁を破った上、罪を認めぬとは!さっそく、処罰を与えてくれるわ!」
「你既然沉默,那这一定是你干的好事!违背不能捕鱼的禁令,还不认罪!立刻给我处决了!」
殿さまはかんかんに怒ってしまいましたが、家来の一人が、「殿、お待ち下さい。モリを作ったのは、確かに大蔵でしょう。しかし自分の仕業に、わざわざそれを分かる様な名を刻む事はいたしますまい」と、取りなしてくれたので、大蔵は罪を逃れる事が出来ました。
老爷大发雷霆,这时一个家臣说道「老爷,请等一下。做鱼叉的确实是大藏。但是如果这是他做的事的话,他应该不会特意刻上自己的名字让别人都知道啊」由于家臣的劝说,才使得大藏能够无罪释放。
この事があってから、大蔵は城下から遠く離れた深海(ふかみ)の里に移り住み、そこで多くの名刀を残したそうです。
自从发生这件事以后,大藏就搬到了远离城下的深海里去住了,并且听说留下了不少宝刀。
そしてあの淵の主は大蔵との約束を守って、あれ以来、山下淵でおぼれ死ぬ者は一人としていなかったと言う事です。
而那深渊主人也遵守和大藏的约定,至此以后,再也没有听说过在山下深渊有淹死的人过。